【香港経済を追え! vol.49】
今回は、香港政府の2021年度施政報告の概要と、中国本土とのボーダー再開に関して、2つのニュースをお伝えします。
■一つ目■ 香港政府 キャリー・ラム林鄭月娥在任中最後となる2021年度施政報告
〜香港政府公式サイトのダイジェスト版から〜
中国語版:https://www.policyaddress.gov.hk/2021/chi/highlights.html
英語版:https://www.policyaddress.gov.hk/2021/eng/highlights.html
一国家二制度の実践を貫徹
・『基本法』第二十三条の当地での立法作業の実践は、国家安全の維持を目的とする。
・テロへの備えや対処能力を強化
・学校・社会・公務員の『憲法』・『基本法』・『香港国家安全法』大衆教育を強化
・公務員の〔任職時の国家への恭順に関する〕宣誓の手続きを更に多くに適用
・厳格に万全なる選挙制度に準拠して、公平かつ公開・誠実な状況の下で第七回立法議員選挙および第六回行政長官選挙を行う
行政管理機能の向上
・政策局の組織構えを見直しして、新たなチャレンジに対処する
・現状の公務員上級職の選任と招聘のメカニズムを見直しし、適材適所を確保する
・政策専門要員の職位を設けて、政策の方向付けと全体の統制をコントロールさせる
・パブリックコメントを早めに行えるよう、40項目の立法案件を優先的に公表する
・実効性を高めた政府情報の発信を行う
住宅建設と土地利用
・適時に今後十年間に33万戸の公団住宅物件を提供することが出来るよう、後半部5年間(2027-28年度から2031-32年度)のプロジェクトを可能な範囲で出来る限り前倒しに落成させる
・都市計画や環境アセスメントまたその他の法定の要求事項を厳しくレビューし、開発の流れを更に簡潔明瞭なものにする
・過渡的な公営住宅物件の供給量を1.5万戸から2万戸に増やし、資格条件に適い公団アパート入居順番待ちしている申請者には期限付きの住宅手当を現金支給し、「劏房」〔本来一世帯向けに作られた住宅物件を無理に複数の小部屋に切り分けた賃貸物件〕には賃貸契約の規制を実施する
・『北部都会区開発プラン』を推進し、香港北部を活力と吸引力に満ちた地区に作り変え、住宅公団やテクノロジー開発などの産業により多くの土地を提供する
・(屯門西の新規開発計画を含む)龍鼓灘また馬料水に近接する深圳河の埋立計画をスピードアップする〔これは深圳河を挟んで大陸側と香港側とで同レベルの都市化を図るプランの一部。現状、大陸側は深圳河ぎりぎりまで商業・住宅開発が進んでいるが、香港側は手付かずの自然土地となっている〕
・「緑化地帯」を検分して、開発の潜在可能性のある土地〔利用権が政府所有・民間所有に分かれているものを統合するケースも含めて〕を探り出す
・提案書を作成して、〔ニューテリトリー独特の世襲不動産である〕祖堂の管理の改善と、その潜在的な開発可能性を十分に引き出す
・住宅開発公団の管理下にある西環邨〔香港島西の公団アパート群〕と馬頭圍邨〔九龍サイド東南部の公団アパート群〕を建替えし、また都市部再開発局との協同で「平民屋宇有限公司」の大坑西邨〔九龍サイド深水埗区石硤尾にある8棟の民間開発のアパート群〕の建替えを進める
・工業ビルの建替えに適用されている「標準価格」補償評価モデルを、〔ニューテリトリー北の〕新開発地区にも適用拡大する
新たな経済推進力
・上場手順の改善やオフショア人民元業務の拡大を通じて、グリーンで持続可能な金融業を発展させる
・「インテリジェントポート」を建設し高付加価値の物流・海運業務を発展させ、大湾区「グレーターベイエリア」内外の連携を強化する
・「ビジネスデータ交換」のシステムを通じて、中小企業の銀行融資を支援する
・国際的に評価が高い紛争解決機関を呼び込み、香港法律ハブに事務所開設を図る
・近年の成績に基づいて、より多くの土地やインフラ設備、科学開発の推進、ハイテク投資、再工業化、大学の科学開発支援を提供することにより、機能が整ったハイテクイノベーションエコシステムを構築する
・「空港都市」の開発を推進し、航空業界で珠海との共同開発を行う
・版権制度をアップデートして、デジタル環境に適したものとする
・世界的規模の文化施設建設を行い、文化的ダイバーシティのある環境を整える
・今後数年に毎年1,000億香港ドルの投資を行い、インフラ整備を進める
住みやすい生活環境づくり
・気候変動脱炭素化事務所を設けて、『香港気候アクションプラン2050』に定める作業に協調する
・都市固体廃棄物有料化を効率よく実施するために準備活動を進める。これには環境保護署が食物環境衛生署からゴミ収集の公共サービスを移管することを含む
・新たなプラスチック製飲食用容器生産者責任制度を導入し、使い捨てプラスチック食器類を規制する
・油麻地ヤウマーテイと旺角モンコックの市街区刷新活動を加速して推進し、都市部再開発局による荃灣チュンワンと深水埗サムソイポウ地区での地区再開発研究を進める
・老朽化した建物に対する強制売却申請の限界値を再評価する〔香港で築50年以上の老朽化建物は3800棟ほどあり、防災上も危険な状態にある建築物に対して強制立退き売却に必要な権利所有者の比率は現行80%であるが、これを70%に下げようとしている〕
・2021年年末から2022年年内にかけて 灣仔ワンチャイと銅鑼灣コーズウェイベイで三区間の新たな海沿いプロムナードを開き、2022年には、旧香港国際空港だった啟德カイタックの元・滑走路セクションの海沿いプロムナードの第一期を完成させる
・香港体育アカデミーの新施設を建て上げ、香港ジョッキークラブ慈善トラストファンドと共同で基金に3億ドルを出資する
市民生活の向上
・普通枠および高額枠の老齢手当金を統合して、資格に該当する老齢者に更に多くの支援を提供
・黃大仙、屯門、南區、元朗および荃灣に区域健康センターを設け、またその他11の区に「区域健康ステーション」を設けて、低収入層向けの医療健康サービスのために持続発展可能な青写真を制定する
・漢方医が患者にグラフィック画像を使った検査(X撮影など)や生化学ラボでの検査を受けさせる指示が出せるようにする決まりを検討する
・関連する法令の改正をして、患者がドクターの紹介状なしに直接専門医療従事者(物理治療者やプロの治療師)のサービスが受けられるようにして、プロの専従者が教育・向上するのを法制化する
・児童虐待の通報を強制とする関連立法の作業を進める
・就学前の学校現場でのリハビリサービスの規定数を9,000から1万に増やし、必要な児童が「順番待ちゼロ」になるよう努める
・立法議会に関連する条例の草案を提出し、強制プロヴィデンドファンド〔=MPF雇用主・被雇用者の両方で退職金積立をするもの〕の制度の下で「相殺」にする手続きを取り消す
人材と青少年の育成
・〔大陸からの〕優秀人材招聘プランの年度あたり規定数を倍の4,000名とする
・香港では新規プロ人材リストを作成し、本来のプロ領域を拡大し、高品質な人材を引き寄せる
・研究と補助金のマッチング計画を二年延長し、高等教育界での研究事業をサポート
・国民教育と価値観教育を強化し、さらに教育局によりモニタリング機能を持たせる
・青年発展委員会を招聘して新たな賛助計画を進め、青少年のポジティブな思想を育成する
香港特別行政区成立25周年祝賀
・市民と一体となって活動やイベントを推進し、2022年香港行政特別区成立25周年を祝賀する
■二つ目■ 中国本土とのボーダー開放に向けての三大条件 ボーダー再開は来年まで待つ必要あり
〜東方日報 OrientalDaily 2021年10月4日(月) から〜
香港人がコロナでロックダウンになって二年が経とうとしている。各業界はボーダーの開通で経済に弾みをつけたいと願っているが、香港政府の防疫対策が十分とは言えず、たびたびコントロール漏れと呼べるケースが発生しており、大陸側に香港とのボーダー再開に不信感を抱かせている。大陸側と香港の防疫感染予防の活動は数日前深圳で相次いで会議が行われたが、政府専門顧問の許樹昌の述べるところによると、「大陸側はボーダー再開に慎重な態度を示しており、香港の特別なクラスターに検疫を免除する政策や、感染確認者が退院する条件を緩和する政策に疑念を抱いており、感染確認者の発見をやすやすと見逃してしまっていることから、ハイリスクのクラスターの検査頻度を強化する必要がある」と見ている。同氏はまた、マカオでの経験に基づき、最低でも四、五ヶ月大陸側とボーダー再開の協議が必要と見ており、香港のイノベーションテクノロジー局が現在研究中の『過関碼』(ボーダー通過コード)のシステムも、ボーダー手続きを基礎にしているとのこと。
詳細を論じる前の時点では航空会社は事故が起こることを危惧
許樹昌は、10月3日のラジオ番組出演の際、大陸の衛生健康委員会から引用して、大陸はクルーメンバー・船員・外交官など検疫免除の政策を引き締めるよう要求していることを明らかにした。過去資料を参照すると、現時点で大部分の入国者は指定ホテルで隔離検疫を受けることが義務付けられているが、クルーメンバー・船員・政府要人・防疫専門家・公務で海外訪問をした一部の官僚などは免除を受けている。
同氏の述べるところによると、会議当日双方は詳細までを検討するに至っていないが、香港は今回の結果に基づいて内部で応対措置を打ち出すこと、たとえば香港の航空会社は正常な運営が出来ているのかなどを、行わなければならない。
このほか、大陸側では香港での感染確認者を退院させる条件がゆるすぎるとの疑いを持っている。現時点で、呼吸器から採ったサンプル三つのうちCT値が33以上であれば、ウイルス量が低い状態であるとして、十日維持できれば退院できる。大陸のほうではこの手法はWHOの支持を欠くものであるとみて、陽性に転じ、また感染確認されることを憂慮している。大陸でのやり方に倣って、二つのサンプルから全くウイルスが発見されないことが必要であり、退院後も指定の場所で更に14日の医学的モニターをするべきであるとしている。
このように許樹昌は今後ケースが増加傾向になれば、竹篙灣〔ランマ島の東北部、ディズニーランドの東側〕などの検疫施設を医学モニターのクリニックに使い、ただローカルのケースに基づいて、CT値が33以上に達している患者が回復したとしても、ローカルコミュニティーに感染の状況がなければ、大陸側は安全係数を引き上げようとするに留まると思われる。
ハイリスクグループの検査密度については、大陸側は医療従事者や検疫隔離用ホテルや空港職員などイミグレーション職員と接触するハイリスクグループに頻繁なテストを提供しており、頻度は二日に一度となっている。現時点、上記のようなグループは強制的にワクチン接種が義務付けられており、医療従事者でワクチン未接種ならば二週に一回のテストを受ける。検疫隔離用ホテルの職員がワクチン未接種の場合は、三日に一回のテストを受け、摂取済みならば7日に一回のテスト。特定のグループの空港職員は7日に一回のワクチン接種とテストをうける。特定グループ以外ワクチン未接種の職員は三日に一度のテスト。ワクチン接種済みならば二週に一度のテスト。許樹昌は、毎日のテスト数が10万に達しており、安全防御に大きな問題はないとしている。
大陸と香港措置で刷り合わせ ボーダー再開の機会も大
許樹昌の指摘するところでは、内地の衛生健康委員会が香港に対する文書での提案を提出することになっているとのことで、その後大陸からスタッフを送って現地で防疫措置の観察を行うことになるとのこと。両サイドで防疫措置を一致して行うならば、ローカルの感染確認者ゼロの状況を保ち、大陸とのボーダー再開の機会も高くなる。大陸側は特に接種率を強調することはないが、香港ではこれが急務となっている。マカオでの〔集団免疫獲得の〕経験を踏まえて、4~5ヶ月のうちには検討することになると思われる。
葛珮帆: 急務に答えて徹底追跡の決意の構え
立法議員の葛珮帆Elizabeth Quat 民主建港協進聯盟メンバーが述べるところによると、「香港政府はもっと早くから大陸側の防疫基準に追随するべきだった。そうしていればいち早くボーダーを再開でき、大陸が提出する条件も飲み込むことが出来たはずだ」としている。しかし「検討するには4、5ヶ月がかかり、市民には失望させることも免れず、「待っても得にならないことを待たされる」というような状況になりかねず、政府が早急にリードをとって、大陸の防疫のピッチと慎重さに追随し、特に新たなイミグレーション手続の自動化システムである『過關碼』が技術上は問題がないはずであるので、香港政府には展開実行の決意をはっきりと示してほしいものだ」と述べている。