【香港経済を追え vol. 44】
香港は清朝時代に英国植民地となり、大陸とは別の発展を遂げ、70年代に鄧小平とマーガレット・サッチャーの間で1997年の主権返還が決まったわけですが、二つの政治制度―香港の資本主義と大陸の社会主義―を維持しながら統合することに、1997年以前は半ばジョークのように「舞照跳 馬照跑」~ダンスは今までどおりに踊るし、競馬も今までどおりに走ると言っていたものです。しかし、実際には高度自治を約束した『基本法』を変更改訂し、『国家安全維護法』が施行され、経済活動の基盤となる政治的情勢は香港人が予測した事態を遥かに超える形で大陸側に引き寄せられています。一昨年の逃亡犯引渡条例改訂反対のデモで始まった民主要求の声は、今年に入って起こったそのリーダー格の活動家の一斉逮捕と、その資産凍結などの措置で掻き消されつつあります。
香港はそれ自体の経済発展をして来たわけですが、日本の国会に相当する権限を持つ、大陸の全国人民代表大会で可決された内容に香港が言及され、それを香港政府の財務長官が政府公式ページの中の自身のブログの中で香港人向けに紹介しています。あまり大きな話題とはなっていませんが、これは香港の在り方を決めるのが香港住民でなく、主権者である国家であることを示しており、日本人にとっては学校で習って当たり前に思っている「主権在民」という民主主義の基本が、香港にも中国大陸にもないという重大な事実を突きつけるものです。今回は財務長官のブログ内容をYahoo!ニュースに転載されたまとめの記事からご紹介します。
財務長官のオリジナルブログ投稿へのリンク先は、この記事の最後にあります。関心のある方はぜひご参照ください。
香港は中国の国家発展の新たなステップを捉えるべきと財務長官陳茂波が呼び掛ける
〜Yahoo!ニュースに転載のHK Economic Journal の記事2021年3月22日(月) 午前3:36から〜
先に全国人民代表大会は「第14次5か年計画」(2021-2025)計画と『2035年の長期目標大綱』を可決した〔会議は3月4日に開催されている〕。これを受けて、香港政府財務長官陳茂波は自身のブログ投稿の中で、「国家発展の新しい段階は香港にとっても新たな発展の契機である」とし、「『大綱』は、技術革新を中核的な原動力と定めて、さまざまな産業や企業の製品をアップグレードしたりモデルチェンジしたりする力にする鍵であること、また同時に以前に注意したことのなかった新たなビジネスチャンスやマーケットや消費者グループを捉えるべきことを提示するものであり、香港はこのチャンスを捉えて全力をあげて参加することが必要だ」と述べている。
陳茂波は、「国際的なイノベーションとテクノロジーの中心および国際的な航空ハブなどとしての香港の重要性について『大綱』が初めて言及しており、国際競合上における優位性を強化改善していく香港を支援する姿勢を示している」と述べた。この姿勢については、香港深圳河岸の技術革新協同エリアが広東・香港・マカオの重要協同プラットフォーム建設に組み込まれることが初めて言及されており、この技術革新協同エリアが大湾区〔GBAグレーター・ベイ・エリア、香港・マカオの二つの特区と、廣州、深圳、珠海、佛山、惠州、東莞、中山、江門、肇慶の大陸内地の9都市を含んだ経済発展構想〕内にある前海・橫琴・南沙の三つの新規設定の経済特区と肩を並べるものであることを示しており、「こうした全体が香港が経済成長の新たな牽引力を把握できるか否かに影響し、ひいては、経済の多元的な発展の統率力と高品質の雇用チャンスの豊かな提供に影響するのだ」と述べている。
大湾区(グレーターベイエリア)を通じて二重のサイクル構造に分け入る
陳茂波は続けて、「『大綱』が述べる内容は中国国内の大きな経済サイクルを主体としつつも、対国内と対海外のサイクルがそれぞれに影響し合って発展していく構造である」と指摘。「経済発展と事業運営の観点から、国の二重の経済サイクル構造は、 香港に代わって大湾区を切り口にすることが重要であり、日増しに拡大し、品質への要求が絶えず高まりつつある大陸内地市場を把握し、技術革新が大陸内の経済サイクル発展に近道を作るものを意味することに他ならない。香港の側は、ジャンプ台・仲介者・高付加価値サービスのプラットフォーム、また国際的に通用する人材バンク・資金プールなどの役割と機能を強化するべきであり、そうすることで大陸市場と国際市場が双方向的に関連づけられリンクされ、さらには国家スタンダードと国際スタンダードが結びつけられることに豊かな弾みをつけることが出来る」と述べている。
この他、陳茂波が指摘したのは、中国は経済が引き続き急ピッチで発展し、中産階層の消費グループが絶えず拡大を続け、産業は絶えず変革と改善を続けるという、全面的な社会主義現代化国家の建設の目標に向けて邁進中であり、これは香港が新たな産業・新業態・新たなビジネスに参与するチャンスもまたおびただしいことを意味している。
陳茂波はさらに強調点として、「国家と香港が長期的平和的に発展することを保っていくには、国家安全の維持擁護が前提とされなければならない」と述べた。「香港は全面的に精確に『一国家二制度』の方針を貫徹すべきであり、国家安全の擁護や『愛国者による香港統治』など関連した法制度や行政メカニズムを確実に行ってこそ、香港がより良い形で国家発展という大目標に統合されて、経済と国民生活のコンスタントな向上を続けさせることができる」と言っている。
Yahoo!ニュースに転載のHK Economic Journal の記事2021年3月22日週一 上午3:36·2 分鐘文章
香港財務長官陳茂波の3月21日付けのブログ原文
(香港政府のサイト内の、財務長官オフィスのページ)