【香港経済を追え vol. 29】
第3四半期GDPの下げ幅が緩まるも、就業はなお困難
新型コロナウイルス肺炎が香港の経済に打撃を与えてから、職を失う勤め人も少なくない。
財政長官である陳茂波の言葉によると、「市況は一部の防疫措置が緩和されて飲食やショッピングモールの賑わいが少しばかり戻ったものの、被雇用者の就業環境が依然として困難が続き、今年になってから失業率が約3%のレベルから6.4%にまで上昇し、就業不足率も1%から3.8%に上っており、コロナの打撃をもろに食らった業界への圧力はさらに大きく、市民の仕事と収入にも直接的な影響を及ぼしている」と述べている。
今年は全世界的にマイナス成長 回復への道のりは遠い
財政長官の陳茂波が自身のブログで指摘するところでは、香港の今年第3四半期の当地総生産GDPの下げ幅は3.4%まで縮まり、前年同期比較では3%上昇している一方、今年前半に約-9%というマイナス成長を記録していることに加え、経済も連続5期マイナス値を示しており、やっとその下り坂が止まったばかり。大陸本土への輸出は貿易優待措置により大幅な伸びを見せ、香港の輸出業は下げを止めて増加に転じ、また個人商品の下落幅も緩やかとなり、昨年の低い水準のベース効果が加わり、この第3四半期GDPに改善の兆しを見せる原因となっている。
財政長官は、IMFが先月に発表したグローバル経済展望報告書に言及し、「中国を除くと、すべての主要経済圏が、今年の触れ幅はそれぞれ違うものの、同じように経済の後退を示しており、予測では全世界の経済マイナス成長は4.4%を記録し、今後復興の道のりは長く険しい」と述べた。来年の全世界経済は5.2%の成長を見込んでいるものの、その原動力となる要因には弱いところがあり、中期的には成長スピードが再び緩み3.5%に落ちるのではと予想されている。財政長官は、「前述の予測は世界各国が2022年末までにコロナを有効に押さえ込んでいるはずだとの仮定に基づいており、大きな不確実性がある」と警告している。
さらに同氏は、「香港政府は経済全体が継続して改善され労働市場を後押しする力となってほしいと期待しているが、国際的な政治環境は複雑で変化が速く、加えてパンデミックがまた大きな波を繰り返すなら、経済圏への衝撃は小さくない。コロナの状況の変化のほか、同氏の見るところでは、現状の金融マーケットの見込み値は高めとなっており、実体経済の成績に反する現象が現れている。今後大きな波が現れる可能性もあり、それにより資金流動の変化が世界経済にも影響することになるも考えられ、新興の経済圏にはもっと大きな衝撃が襲うことがないとは言えないので、香港ローカルの経済回復にも翳りを落としている」と述べている。
ニュースソース:東方日報 Oriental Daily 2020年11月2日 上午5:45
香港メーカーの生産工場は生産地ラベルを変更済 状況逆転のチャンスは薄い
【Now新聞台】
アメリカが香港からの輸入品にメイド・イン・チャイナの表示をする規定を要求して、来月10日から実施となるため、香港政府はWTOの紛争処理制度のプロセスを発動させ、香港政府がアメリカに対して行う申し立てを取り上げ、アメリカ側が10日以内に回答するよう求める。ある香港の貿易商は既に産地表示ラベルの取替えを終えているが、アメリカ側の決定を覆すチャンスは薄いと見られる。
アメリカ税関は去る8月に文書発表にて、香港生産のアメリカ向け輸出品に「香港製造」の表示を使うことは出来ず、「中国製」に変更するよう求めており、来月10日から正式に実施となる。
香港政府はWTO紛争解決制度に基づき、香港政府からのアメリカへの申し立てをWTOが処理するようプロセスを発動。これに対してアメリカは10日以内に回答をすることになり、30日以内に香港と交渉を進め、60日内に紛争解決が出来ない場合、香港政府には、紛争の審議をさせるための専門家委員会設立を要求する権利がある。
貿易経済発展局( 商務及經濟發展局Commerce and Economic Development Bureau)の局長である邱騰華は、今回は香港政府が主権中国返還後に初めて関連のプロセスを発動したもので、香港がWTOの単独メンバーであるにもかかわらず、今回の関連するアメリカ側の要求は香港のステータスと利益を損なうものとしてアメリカ側を批難している。
同氏は、「双方の折衝を通じて問題解決されることを望んでいるが、これまでのところ、米国側は香港政府と激しい対立と要求撤回を見せていながら、実体があり説得力のある回答を出していない。米国側の過去六週間の反応は期待を裏切るものであったので、香港は米国に対して更に一歩踏み込んだ行動を取る必要がある」と言う。
同氏の指摘では、「香港政府がWTOの規定に違反した仕方でメーカーが製造地表示をすることを勧めるわけがないので、メーカーがそれぞれの判断で各方面の要求を満たす表示を考えることになろう」と言っている。
ある香港メーカーが明らかにしたところでは、規定の発表から直近三ヶ月までに、商品の産地表示のタグを付け替える作業は完了しているが、心配なのは今後どのように関税をどのように計算するかということ。
中小企業連合会の永久名誉主席の劉達邦Danny WONG Tat Pongは言う:「ラベルが「中国製」となっているから、理論上は大陸本土(商品)のアメリカ輸入の関税に従って課税するはずだが、今のところまだ実行例がなく、おそらく11月に大統領選が終わるのをまって、その時に誰が大統領として登場するか、対中政策が強硬かどうかを見て、もし今まで以上に強硬ならば、香港を犠牲にして「香港製」も一律大陸本土と同じ関税を払うということにするも可能性もあり得る」と述べる。
劉氏の見立てでは、「香港製造のタグにもう一度付け直すことができるチャンスは大きくはなく、アメリカ人消費者には香港製品と中国大陸製品の区別がなかなかつきにくいだろう」と案じている。
ニュースソース:NOWニュースチャンネル 2020年10月30日 18:11