【香港ローカル ニュース Vol. 52】
香港永久離脱を理由のMPF引き出し、 第一四半期で13億香港ドル 三割増し
強制退職金積立金 Mandatory Provident Fund(通常、強積金または略称MPF)は、唯一香港の給与所得から天引きされる項目です。日本の年金積立と、目的とするところは似ていますが、徴収した積立額が政府保証でなく、民間のファンド運用会社でプールされるため、元本保証ではありません。
一方日本では、国営の郵便局が民間企業になって、郵便局の貯金や保険で蓄積された資産が、外国資本家の株主によって食い物にされるのではないかという恐れもありましたが、香港でもMPFの制度で一般市民の所得からプールされている現金資産は、金融の動きの中で、香港政府の財政剰余金とともに関心が高い項目です。強制部分は給与所得の5%で、雇用主が5%を上乗せして、毎月10%を積み立てていきます。
MPFは香港市民の退職後の福利厚生・生活費の主な財源のひとつとなりますが、香港の土地を離れて、香港人が他国へ移民したり、外国人居住者で給与所得者であった者が本国へ帰国する時には、年齢制限に関わらず、解約して名義人のMPF受益者が現金受け取りすることが出来ます。
諸々の理由により、1980年代の移民ブームが、21世紀の前半である2020年にまた起きつつあります。移民によって香港から出て行く香港人や外国人居住者がいれば、それと共にプールされていたMPFの現金資産が流出することになります。この問題についてYahoo! 香港ニュースサイトに転載された、日刊経済新聞の信報Hong Kong Economic Journalの記事をご紹介します。
ニュース出典: 信報財經新聞 Hong Kong Economic Journal 2020年9月14日を転載したYahoo! ニュース(香港中国語版、経済ニュース)
香港のMPFの資産流出状況が続いており、MPF管理局が発表した最新データによると、今年第一四半期に「香港から永久に離れる」というカテゴリーでMPFの繰上げ引き出しが7,600件に上り、一年当たりにすると10%の上昇となり、金額では12.95億香港ドルになって、一年当たりに換算すると32%の急増となる。しかし、前年四半期比較では、件数と金額はそれぞれ9.5%と9.8%の減少となる。
条例の規定では、給与所得者は65歳になってからはじめてMPF累積全額を受領することが出来るが、もし定年退職以前に繰り上げ受領するには、六種類のいずれかの条件にあてはまる場合のみとなる。これには、60歳未満での繰上退職、香港を永久に離れる場合、身体的に自由な行動能力を失った場合、末期の疾病に罹っている場合、死亡、あるいは過少残高の場合などの場合を含む。
昨年は48億香港ドルに上り、5年間で最高額
資料の示すところによると、去年の第4四半期に「香港を永久に離れる」という理由でMPF積立金を引き出した金額は14.35億香港ドルに達し、通年では48.45億香港ドルに届いていた。これは2014年に最高記録が出た時以来、四半期また通年度での更新最高額であり、前年比では、四半期ごとでは46%、通年度では1.1%の増加になる。
昨年、通年で「香港を永久に離れる」という理由でのMPF積立金の引き出し申請件数は、3万300件に上り、前年比では10%の減少だったが、金額面では上記の通り48.45億香港ドルとなり、前年比1.1%増だった。
このうち、第4四半期に「香港を永久に離れる」という理由で引き出されたMPF金額は14.35億香港に達しており、前年対比では46%の急増となっており、前年同期対比でも2.6%の上昇であった。
「香港を永久に離れる」という理由で繰上引き出しした件数は、前年の第4四半期からはっきりと増加傾向を示しており、今年3月末までの9か月内に、累計で2.4万件超があったことになり、引出額合計は41億香港ドルに上る。
数字の急上昇が、昨年後半からの社会的動揺の問題により香港を離れて移民した人数が急増したからなのか否かについて、MPF管理局の機構事務長官・常務役員である鄭恩賜は、「6月の時点で、管理局として詳細な分析は行っていないが、申請事務の受入側としての立場から、過去に香港を永久に離れることを理由にMPF引出をしたこの制度の加入者には、老後の生活のために中国内地への移住した者も含まれており、理由等に大きな変化があったとは聞いていない」と述べている。