【香港ローカル ニュース Vol. 43】
7月1日は、新しく導入された国家安全法に基づいて300人を越える逮捕者が出ました。
香港民主化政党である、香港衆志(Demosisto)の党首、羅冠聡 (Nathan LAW)は早くもアメリカに亡命しました。そのほかの代表者三名、黃之鋒(ジョシュア・ウォン)、周庭(アグネス・チョウ)、敖卓軒(ジェフリー・ゴー)も辞任を発表して、同党は6月30日で解散となりました。
7月1日のデモの様子は既に日本国内でも報道されていますが、『港区維護国家安全法』(香港特別行政区国家安全保護法)の可決される前の日曜日(6月28日)も、市民と警察の衝突がありました。
新しい法律は香港の憲法とも言える『基本法』よりも上位の権限のあるものとされ、条文内容の全貌が明らかにされることなく、北京の全国人民代表大会で可決され、即時、香港行政長官の権限で施行されました。
以下は、その当時6月28日の様子を伝える新聞記事です。
▼声を挙げないデモに対し、警察はネイサン・ロードを全面封鎖し、市民を「知能障害」と罵倒し胡椒スプレー噴射するなどして、53名を逮捕
民主派系の『蘋果日報』 更新時間 (HKT): 2020.06.29 02:20
[ 訳注:蘋果日報の社主や、その他の高度自治を求める民主化運動家らと共に今回の国安法により逮捕されるのではという声があります ]
『悪法がまもなく可決へ』(記者:廖承志 李詠希 張雅婷)
香港版国家安全維持法が火曜日(6月30日)中に北京にて可決される見込みとなり、ネット市民は最後の抵抗の機会を逃すまいと、『6.28サイレント・デモ』を呼びかけた。場所は九龍半島の目抜き通りであるネイサンロード沿いにジョーダンからモンコックまで。平和的なデモだが警察側からの圧力がかかり、デモ隊を取り囲む警官から「バカ」「知能障害」などのヤジが飛び、やみくもに胡椒スプレーを浴びせたり、違法集会の疑いとして市民を逮捕するなどした。一日の活動の間に少なくとも53人が逮捕されたが、それには区議会議員2名と未成年10名が含まれている。区議会議員は、警察が国安法施行前に萎縮効果を狙ったものと、疑いを掛けている。
デモは日曜日6月28日の午後3時に始まり、警察側は早くも午後2時過ぎにはジョーダンロードの裕華国貨Yue Hwa Chinese Products Emporium(大陸国産の工芸品や漢方薬などを主とした百貨店) 外に重装備の警官を配備し、MTRジョーダン駅構内にも平服の警官を待機させていた。午後3時、デモ隊が動き始めると、一部の参加者は「五つの要求、一つも欠かさず」の手振りをして見せたが、暴徒制圧重装備警察官【以下、防暴警】は失笑とともに、「7.1<25年前の香港特別行政区政府成立の記念日>にはどこへデモに繰り出すバカがいるもんか」と罵声が飛んだ。
デモ開始6分後、胡椒スプレーガンを手に構えた防暴警が油麻地甘肅街(やうまーていYau Ma Tei, Kansu
Street)で隊列をストップすると、青い警告バナーを掲げ、すべての人が歩道へ引き返すよう求めた。立入禁止の封鎖線はその後拡大して、複数の街区に及び、市民の正常な活動を妨げるものとなり、警察が彌敦道ネイサンロードの碧街(Pitt Street)の近くまで封鎖線を引き上げると、ある市民はバスに乗ることが出来ないと不満をもらした。すると軍装の警官が挑発して「急いでるならバスに乗らずに、タクシーに乗れや!」と声を挙げた。
▼反対スローガンの様子を撮影しないよう、警官が報道記者を突き飛ばして阻止
デモ隊はハミルトンストリートに近づいた頃、警察側のメディア連絡チームが封鎖線のオレンジ色のリボンを引いて、報道記者がデモ参加者へのインタビューを阻止し、記者証の提示とマスクを外すよう要求し、身分確認の後に開放した。ある記者は防暴警に突き飛ばされ、ある記者は押しやられてから、関連の警官の号令を撮影しようとしたところ、その警官にカメラを押しのけられた。市民の一部はその場から閉じ込められてしまい、逆に警官から「知能遅れじゃないのか」、「介護者さがしてから町を歩け」などとなじり飛ばされた。
モンコックの兆萬中心(CTMA Centre, 商業ビル)の外、防暴警の一群が封鎖線を張った。目撃者によれば、警察官一名がバランスを崩して倒れたが、傍にいた警官がそのありさまを見て警戒を高め、警告をしないまま報道記者と市民に向かって胡椒スプレーを噴射し始めた。大勢が被害を受けて具合不調を訴えた。その後、警察はブルーの警告バナーを掲げ、路上の市民と報道記者は違法集会に参加していると見做すことを示した。
▼「意見を言う自由な空気すらない」
午後5時50分、警察側がネイサンロードとダンダスストリートの交差するところで男性41名女性12名を違法集会の容疑で逮捕し、観光バスに乗せた。その中には白地に赤で「国安」と書いたシャツを着ていた東区区議会議員の徐子見(Andy Tsui
Chi-kin)と、油尖旺区区議員の林兆彬 (Ben Lam Siu-Pan)の姿があった。二人は警察の法的執行の過程を撮影していた。逮捕された者には、救急隊員、高齢者、通行人も含まれており、紅磡ホンハム警察署に移送された。徐子見はその後血糖値下がり過ぎの疑いで病院に搬送されなければならなかった。
逮捕された者を援助した油尖旺区区議会副主席の余德寶(Andy Yu Tak-po)に拠ると、逮捕者には10名の18歳未満の青少年と、1名の救急隊員が含まれており、また既にメディアに逮捕される様子を撮影されていた父親がいるが、その妻および子供は極度のショックで警察署に出向くことが出来ないでいる。友人の助けを通じて、この父親は警察側が「国安法」のお膳立てをしていると非難し、「警察は7月1日の前に大規模な無差別逮捕を繰り出しているけれど、誰が見ても国安法のために道を作っている。7.1前には(警察からのデモ活動許可状である)反対無し通知書はもらえなかった。だから市民は街に繰り出したり意見を言ったりする自由な空気もない。ものすごく怒りを覚えます」と言っている。
立法議会議員の涂謹申(James TO
Kun-sun、立法議会議員であり油尖旺区区議會(奧運(オリンピアシティ)選区)議員)は警察が権限を乱用していると非難し、やり口が笑えるほどに幼稚かつ卑劣であるとし、「市民はスローガンや横断幕を使うでもなく、結局どんな時間になっても、一網打尽に捕まえようと決めていたことなので、(集合制限令の緩和後の上限数である)50人でもどんな人数の集まりでも同じことだったでしょう」と言っている。最終的に法的に起訴するつもりの行動ではなく、単に衝突のための衝突に過ぎないと思うと同氏は述べている。
出典:
https://hk.appledaily.com/local/20200629/O7VAY764MGHQ5I74W47Y2ZIDFM/