【香港経済を追え vol. 17】
香港政府の打ち出した感染症対策基金に関して、前回に引き続き「雇用保証プラン」を中心に、2つの記事をご紹介します。
▶︎中小企業の9割が人員削減を考慮。「人件費を出してもらっても役に立たない」
香港政府は、感染症対策基金の第二弾として市民に1,375億ドルを「還付」することを打ち出し、その内800億ドルは雇用主が従業員に支払う給与の半分を補填するというものだが、社会の末端部である被雇用者からは実質的な恩恵にはならないと思われている。
ある団体の調査によると、インタビューに応じた中小企業経営者の9割近くが政府による給与補填は助けにならず、閉業するか人員削減することを検討しているとの結果が出ている。
「低所得生活保護を守る連盟」の指摘では、新型コロナウイルス感染拡大関連で既に失業者が出ており、政府に失業援助金を設けるよう訴えている。「低所得生活保護を守る連盟」は政府の施策第二弾が出てから、
250名の深水埗/油尖旺区の社会末端部の市民と50名の飲食の中小企業の雇用主を訪問したところ、7割以上は給与額の半分を政府が補填するという補助があっても閉業・人員解雇は免れないと考えていることがわかった。インタビューを受けた3割は既に職を失ったと答えており、その内6割以上は基金が出ても元の雇用主に自分を雇い直してもらう助けにはならないと考えている。
飲食業経営者側からも、6割の経営者が政府の施策は既に解雇した従業員を雇い直す助けにならず、9割近くがむしろ閉業すること・人員解雇を考えているという。
経営者は政府の無責任に非難轟々
食品製造業を営むJohnsonさんの言葉によれば、新型コロナで商売がガタ落ちになり、会社は従業員の給与を支払うほかに、賃借料も大きなコストであり、早くから従業員に年次有給休暇を消化するよう促してきたという。Johnsonさんは、「金さえ出せば商売は続けられると思っている」と政府が責任を企業に押し付けて来ていると、非難の声を上げている。政府は飲食業など指定の業界には資金不足の一時しのぎの貸付金を提供して、同時に金融管理局と討議の上で、当初6ヶ月は利息支払いだけとし、家主が賃借料を下げる余地を与えることを狙っている。
フリーランスの「藍猫」さんは、パートでのウェイターとインストラクターの仕事をしていたが、旧暦の正月の後からは手工芸を教える仕事もなくなり、3ヶ月近く貯金を取り崩して、なんとかルームシェアの家賃を賄っている。しかし貯金も使い果たして、「もうあと1ヶ月分」しかないという。藍猫さんは、「政府は生活保護の現状の制度だけで問題解決しようとして、失業問題そのものを直視しようとしていない」と政府を手厳しく批判し、「やるなら失業援助金を設けて救済してほしい」と述べている。(記者:廖承志)
出典: 20200414 午後10時 蘋果日報Apple Daily電子版から
https://hk.news.appledaily.com/local/20200414/OSMJ6TZWMLMZNTDDQJJWLR4GGA/
▶︎【武漢肺炎】給与補填は小手先の施策。キャリーラムは失業援助金を設けることをつっぱねる(問答集付)
1,300億ドルあまりの感染症対策基金については、なおも抜け穴だらけだと指摘されているが、行政長官キャリーラムは14日午後の記者会見で、施策第二弾のプランには「雇用保証」の給与補填計画が含まれており、雇用主は今年の1月から3月のいずれか1ヶ月のデータを選んで給与補填額の計算が出来るとしている。給与補填期間中の従業員数は今年3月の被雇用者数を下回ってはならないとされる。政府は、同日立法議会議員に第二弾感染症対策基金の関連書類を手渡し、立法会財務委員が17日にも予算支出可決の審議をすることを願っている。政府は失業援助金の制度を設けないとしており、キャリーラムは「失業者は生活保護の申請が出来る」としている。
キャリーラムは14日午後の記者会見で、印刷されたばかりの感染症対策基金プランのパンフレットを手に、進捗状況を発表した。「雇用保証」プランは、元は1月から4月までの内、雇用主がひと月を選んで給与支払補助金の計算基礎にするというものであり、給与支給者の人数を管理するというものだったが、キャリーラムは労働組合などの意見を聞いて、雇用主が4月の被雇用者に手を加えるかもしれないことを考慮して、1月から3月のいずれかひと月を計算根拠にすることにしたとのこと。これは、旧暦の正月休み前が、従業員数が一番多いはずであるので、雇用主が現時点での従業員を解雇することがないよう、3月時点での従業員数を元に計算することを意図したもの。給与補填を受ける期間の従業員数は3月での従業員総数を下回ってはならない。キャリーラムはまた政府の補助金はすべて給与支払にのみ適用するべきもので、賃借料などの他の支出に充当してはならないと強調している。政府が、MPFアカウントのない市民も受益者となるよう、プランの調整することがあるかどうかについては、キャリーラムは「今回のプランはMPFアカウントのシステムを通してのみ行なわれ、MPFアカウントのない者、また65歳以上の高齢者従業員は対象でない」と答えている。しかし、今回の給与補填はランプサム基準であるので、雇用主が65歳以上の市民を雇い入れるならば給与補填はそうした従業員への保証も含むことになり、社会福祉署も異なるプランによって65歳以上の市民への保証を備えるという。このほか、固定路線のミニバスドライバーも政府の運輸業支援の計画に組み入れる予定であるとのこと。
大陸内地から香港へ入境する人への強制検疫が、有効期限を来月7日までとしていることについて、キャリーラムは「ここ数日来、武漢肺炎(=新型コロナウイルス)の毎日の感染確認者が一桁台に下がって来たものの、気を緩めてはならない」とし、「今後も状況の変化を見守り、必要な際には関連措置の延長もある」としている。(記者:梁穎妍)
【就業保障プランQ&A】
Q:補填金額はどのように算出するか?
A:補填金額は従業員給与の半分とし、金額は9,000ドルを上限に、6か月間に限る。
Q:いつから申請受付が始まるか?
A:5月末までには申請受付を開始する。二回に分けて支給され、目標としては6月中に第一期分を雇用主に渡す。第一期は6月~8月の賃金に充当し、第二期は9月~11月の賃金に当てる。
Q:第一期補填金の申請はどのような手配になるのか?
A:雇用主は1月、2月、3月のいずれかを指定月として選択可能。6月、7月、8月の補填額は指定月の支給実額を算出基礎とする。雇用主は給与支払の従業員数が3月期の従業員数より少なくならないことを約束することが必要であり、政府の賃金補填は全額従業員の給与に充てなければならない。
Q:第二期の補填金の申請の手配はどうなるか?
A:9月、10月および11月の申請要領が公表されてから、詳細は第一期の補填金実行の経験と経済状況の変化を参考にする。
Q:プランの受益者は、雇用主・従業員の両方でどのくらいの規模か?
A:MPFプランの参加者およそ26万人の雇用主、150万人を超える被雇用者,および約21.5万人の自営業者(一律7,500ドルの手当)、またMPF以前からのORSO (職業退休プラン)参加者の約4,650名の雇用主とその従業員30.8万人が受益者となる。
資料ソース:労工及福利局
出典:蘋果日報 20200414 午後 00:34