【香港ローカル ニュース Vol. 22】
中国大陸湖北省武漢市で発見された疫病の危機が香港にも
1月9日,世界保健機関(WHO)は,中国当局が武漢で入院中の肺炎患者から新型コロナウイルスが特定されたとの予備的な確定を行ったことを発表しました。政府は到着出口での検疫コントロールの強化を指示していますが、どのような具体策を施しているのかは明らかにしていません。その一方で、香港市民が大陸へ行く際には生鮮食品市場に行ったり、野生動物を食べたりしないようにと呼びかけています。
1月6日付けのon.cc 東網 の記事から、香港で発見された患者の経緯と今後想定される対策についてお伝えします。
9 歳児童が発熱 民間の開業医からの報告が上がる
大陸湖北省武漢市で急激に感染が広まった肺炎状の伝染病の病原体はまだ特定されていないが、香港でも新たに9件の疑わしい症例が発見された。これには2歳の女の赤ちゃん1名、民間開業医から病院へ報告のあった9歳の男児1名、また開業医での診察後に追跡して隔離された20歳の女性1名を含むもので、これらの患者は過去14日間に武漢市に滞在しており発熱の症状を示しているが、容態はみな安定しているという。これまでの疑わしい件は合計17件となっている。旧正月は原因が特定できない肺炎の流入のピークになると思われ、政府に対して「武漢から香港に入るすべての高速鉄道とフライトを停止せよ」との声が出ている。食物衛生局局長の陳肇始は、昨日改めてそのような措置を取ることを否定し、国境の検疫疾病防御コントロールを強化したと伝えた。伝染病専門家は、大陸直通の高速鉄道のプラットフォームに検査ステーションを設ける、あるいは直接列車上での検疫を行うことを提唱している。新たに見つかった9件は男性5人女性6人、年齢は2歳から55歳までで、いずれも過去14日以内に武漢を訪れているが、生鮮市場には行っていないにもかかわらず、いずれも発熱の症状を訴えている。収容先は下の表の通り。全員症状は安定しており、現在、隔離病棟にて治療中。合計17件の疑わしい事例のうち、5人は既に退院しているという。
学生会:衛生局職員が中文大学に立ち入り
さらに疑わしい事例で「患者が消息不明」になるという事件があった。20歳の香港中文大学の女子学生が武漢から香港に戻った後、体調不良のため、1月5日午前に沙田の民間クリニックで診察を受けてから、救急医療のガイドラインによりプリンスオブウェールズ病院に自分で行くように指示を受けたが、女性は実際には指定の病院に行かずに旺角モンコックに移動し、その後公立病院に姿を現さなかったため、衛生疾病防止保護センターが報告を受けてからすぐに当該民間クリニックに問い合わせて女性患者の連絡先を入手し、患者を探し出してプリンスオブウェールズ病院に送り届けて治療に当たらせた。香港中文大学連合書院学生会が学校側に伝えたところによれば、当該のベツレヘム学生寮で一人の学生が発熱と咳を起こし、昨晩衛生局職員が尋ねて来た際に、体調不良の学生を病院治療に送ったとのこと。
伝染病防止強化と発表しているが、詳細は明らかにされず
現在のところは、空港において赤外線での香港到着時の乗客体温のモニター、高速鉄道駅ではランダムで旅客の検査をしているのみである。陳肇始は、空港や高速鉄道構内でも当局は厳戒態勢で臨んでおり、武漢経由の列車乗客といっても武漢市内を実際に訪れているかは判断できず、すべての乗客に体温検査を実施するのは難しいとしている。政府は到着出口での検疫コントロールの強化を指示しているが、どのような具体策を施しているのかは明らかにしていない。その一方で香港市民が大陸へ行く際には生鮮食品市場を行ったり、野生動物を食べたりしないようにと呼びかけている。
香港中文大学許樹昌は高速鉄道の車両に乗り込んでの検疫を提唱
香港中文大学呼吸器系統学講座の教授、許樹昌氏が昨日指摘したところによると、香港と大陸内地との交通往来は旧暦正月を控えてこれからさらに頻繁になるので、武漢経由の高速鉄道では、たとえば列車内での検疫を行なうなど、モニター強化を提唱しているが、電車便の遅延を招きかねないとも知れない。あるいは高速鉄道プラットフォームにモニターステーションを設け、ウイルスが香港市内侵入を阻止することも可能性として挙げている。
大陸内地でも、市内で爆発的な伝染は今のところ起きておらず、これから2週間が鍵であり、武漢でもし爆発的な伝染が起きれば、香港政府もモニターの強化が必要であり、その際には内地から香港へ到着した者、あるいは内地を訪問した香港人市民のすべてをモニターの対象とすべきだろうと推奨している。同氏はまた、大陸では新種のコロナウイルスである可能性もあるという声もあり、現在大陸の研究室で分析が実行されている。まだ結果が発表されていないが、ウイルスのDNA配列上に関連したヒントが見つかっているとも言われている。同氏は大陸側の資料が不十分であるので、感染状況が拡大中であるので、ウイルスが人と人の間で感染するものなのかはさらに時間をとって観察が必要であるが、そのような可能性がないとも言えない。治療については、SARSの治療に使用した薬物を今回のウイルス感染者にも使用することを考えているとのこと。これはコロナウイルスに対処する酵素の一種で、プロテアーゼ阻害剤と呼ばれる。抗ウイルス剤のリパビリンと一緒に使うことで効果が上がり、香港にはある程度の備蓄がある。
1月5日 新たに増えた疑わしい件9つ
案件 | 年齢性別 |
感染ウイルス テスト結果 | 収容病院名 |
1 | 32歳男性 | A型(H1)インフルエンザ | マーガレット |
2 | 2歳女嬰児 | 呼吸器合胞ウイルス及びコロナウイルス229E | マーガレット |
3 | 45歳男性 | 結果まだなし | 將軍澳 |
4 | 45歳女性 | 結果まだなし | ラットンジー |
5 | 42歳女性 | A型H3インフルエンザウイルス | エリザベス |
6 | 22歳男性 | 結果まだなし | エリザベス |
7 | 55歳男性 | 副インフルエンザウイルス1型 | エリザベス |
8 | 9歳男児 | 結果まだなし | 聯合基督教医院(開業医からの報告例) |
9 | 20歳女性*(中文大学女学生) | 結果まだなし | プリンスウェールズ(開業医の許を離れてから発見) |
*衛生防止保護センターは未発表の情報
資料出典:衛生防止保護センター(Centre for Health Protection衛生防護中心は、香港の衛生署の監督下で、疾病予防とコントロールに当たる専門部署)
出典:
Yahoo! News に転載されたon.cc 東網 の2020年1月6日付けの記事
(タイトル)武漢から香港へ戻った女性が民間の病院での診察を拒否されウェールズ病院へ回される 中文大学女子学生は一時「行方不明」に