【香港経済を追え Vol. 13】
12月18日に習近平氏がマカオを訪問した際、数か月にわたり混乱が続く香港とは対照的にマカオでの祝賀ムードの様子が映し出された。人民元決済の証券取引所をマカオに開設するのでは?などという噂があったが、マカオが人民元で決済できるまでのオフショア金融センターへの道のりは、香港を脅かすにはまだまだ遥か及ばないようである。
香港政府財政長官・陳茂波は、自身のブログで「通常通りの繁忙期の景気の回復はまだなく 旧暦新年(旧正月)の後には閉業ラッシュの可能性もある。」と発言している。
クリスマスが終わり、正月と旧正月を迎えるが、香港経済の最大の懸念要素であるデモは、依然として続いている。
【警察武力との抗争】香港の金融上のステータスに挑戦するには開放自由が必要、アナリストによれば共産党一党独裁の下にある中国の諸都市にはそもそも不可能。
中国国家主席習近平氏は、12月18日から20日までマカオを訪れて、主権返還20周年記念儀式と第五回マカオ特別行政府就任記念式に出席した。地方都市訪問の際には、「おみやげ」を持ってくるのが慣習であるため、今回のマカオ訪問にも人民元決済の証券取引所をマカオに開設するのではという噂があったが、そのような宣言は出なかった。
”Red Capitalism: The Fragile Financial Foundation of China’s Extraordinary Rise”(中国語訳タイトル《中國金融大揭密》)の共著者で中国への資金投資市場のアナリストであるフレーザ・ハウイ氏は、マカオに国際金融センターを設けるなどというのは夢物語に過ぎず、中国が真の意味で開放されるのでない限り、中国のどんな都市も香港に取って代わりになるのは不可能としている。
ハウイ氏は「現在も香港は中国の対外的な金融窓口であり、金融センターとして香港がいま直面している挑戦は、マカオ、シンガポール、台北、東京などから来るものではなく、香港の役目の代わりになるのは上海やシンセンだけに過ぎないが、それも中国が開放政策を取り、資本・情報・人材が自由に流通することが前提だ。しかし、共産党一党独裁の中国の現実を前にして、これはまったくもって不可能であるため、香港の地位は依然としてゆるがない」と言っている。
習近平の今回のマカオ訪問は、香港への牽制とも見られているが、同時に北京政府がどれほどオフショアの人民元決済の金融センターを欲しがっているかを示すものでもある。そして正にその点で香港に代わるものはない。
マカオについて、ハウイ氏は指摘している:マカオは香港と同様「一国二制度(ひとつの国家に社会主義と資本主義が共存する)」を敷いている点で似ているようだが、マカオのほうは「二制度」よりもずっと大きく「一つの国家」のほうに比重が掛かっている。マカオは国家安全法に基づいて立法が行われており、反対派の勢いもない。マカオと珠海の間の『国境』管理が杜撰なのも更に問題である。先ごろ月初めに、香港のアメリカ商工会議所の会長と事務局長が招かれてマカオのアメリカ商工会議所の晩餐会に参加しようとした際、2人は入国を拒否され数時間拘留される目に遭った上、その理由が明かされることはなかった。ハウイ氏はこのように書いている:「2時間の拘留で釈明もないままに香港へ送還される—こうした仕打ちは国際ビジネスに開放的な姿勢を見せる見本にならなかったのは確かだ。人的資産・金銭・情報が自由に流通することが金融センターの必要要因であり、マカオはひとつ目の関門さえクリア出来ていない」。
ハウイ氏の見るところでは、香港の金融センターの地位は堅固であり、マカオはまったく香港に挑戦する能力がない。発展していったとしても、新たな「雄安新区」になるだけだ、としている。
「雄安新区」は河北省に政府の後押しでモデル都市として近代的な街づくりをしようとしたエリアだが、土地の高騰で混乱を招き、インフラ設備などが整う前にバブルが崩壊して都市計画は頓挫した。ハウイ氏は断言している:マカオは主権返還20周年を祝っているが、それはマカオが将来的に中国にとって最大の人民元のオフショア金融センターになることを自動的に意味しているわけではない。
【NOWニュースチャンネル】
香港政府財務長官・陳茂波は自身のブログで、「クリスマスや新年など恒例の繁忙期が過ぎた後も景気は急に回復はせず、新年明けた後には閉業ラッシュになる可能性もある」と書き込んだ。同氏によれば、香港の最新の失業率は3.2%まで悪化し、小売・旅館業・飲食業が最も打撃をうけており、今年第二四半期の合計データでは3.9%から5.2%に上っており、3万1000人超が失業している。
陳茂波は、「過去数週間の市況はあまり緩みが出ておらず、部分的に飲食が元気を取り戻したに留まる。しかし、ショッピングモールの内部で集会してデモ行進する者がおり、商店の営業妨害や破壊に至る場合、違う意見の市民が荒い言動に出てエアブラシを吹き付けるなど、違法な行為が治安と市民の安全を損ねている。これにより働き口がなくなる者も出ている。新たな年には各業界が活路を見出し、それぞれにビジネスで成功してほしい」と語った。
出典:アップル・デイリー
https://hk.news.appledaily.com/international/realtime/article/20191223/60403148
『日経アジアンレビュー』の以下の記事より転載
Even Xi can’t turn Macao into an international finance center; Hong Kong’s position will remain secure until the mainland itself fully opens up (by Fraser Howie)
DECEMBER 19, 2019 14:47 JST
https://asia.nikkei.com/Opinion/Even-Xi-can-t-turn-Macao-into-an-international-finance-center