【香港経済を追え vol. 10】
1ヶ月の定期預金金利が年利5%!
今年5月CMB Wing Lung Bankが1ヶ月の定期預金金利で年利5%を打ち出し、金融ショック以来10年あまりで群を抜く超高金利となりました。
FPSの登場で口座振替が便利になったと同時に預金顧客の確保の競争が激化し、業界全体が顧客流出を防ぎ、資金安定確保のため高金利を打ち出しているようです。
銀行を越えて口座振替が出来るFPSというサービスを使ったことがない人も多くいます。オクトパスにクレジットカードと同じ機能を持たせて海外の支払いに対応できたり、香港内であれば、各種のケータイに表示させたQRコードを読み取らせて即時銀行口座から引き落とすシステムなど、他にも選択肢がいくつかあるからです。
そんなFPSの現状とバーチャルバンクの開業延期について、お伝えします。
■香港經濟日報 電子版から■
『「異なる銀行の口座振替が、モバイルデバイスでも簡単に出来る」という触れ込みで始まった「轉數快 (Faster Payment System)」の運用が始まって、一年になりました』
轉數快 (Faster Payment Systemファスター・ペイメント・システム) 運用一年経過。顧客確保合戦 激化へ。
「轉數快 (Faster Payment System)」(以下、FPS)が昨年9月17日に始動してからちょうど1年。香港金融管理局(以下、管理局)は今年7月末までで340万のアカウント(携帯電話・メールアドレス・FPS識別コードを含む)の登録者があったという。
管理局スポークスマンは問い合わせへの回答にふれ、一年間で2,600万件の取引があり、4,870億香港ドルの取引額に上ったことを指摘している。
今年8月だけをとっても、毎日平均延べ約11万4千件の取引があり、一日あたり平均約19億香港ドルの金額に上る。一日平均の取り扱い件数は、このシステムが開始した最初の月のおよそ2倍に増えた。
FPSの登場で、地場銀行の顧客争奪戦は激化するばかりで、優待利息レートが突出することもしばしばあり、今年5月に招商永隆銀行 CMB Wing Lung Bank (2008年にチャイナ・マーチャント銀行が永隆銀行を吸収合併して出来た銀行、以下CWB)が1ヶ月の定期預金金利を年利5%として打ち出し、金融ショック以来10年あまりで群を抜く超高金利となった。
CWBの財政部長 蕭啟洪氏は、「FPSの登場で口座振替が便利になったと同時に預金顧客の確保の競争が激化し、業界全体が顧客流出を防ぎ資金安定確保のために高金利を打ち出している」と、躊躇することなく述べている。
管理局スポークスマンによれば、現在までのところ、FPSに関連したサービスで、銀行またはプリペイド型ツールについて67件の苦情が寄せられているが、いずれも振替作業のミスなどではなく、消費者の不満は操作のわかりにくさに起因するものだと言っている。
さらに、現状のFPSの使用量は主に個人間の支払いに集中しているが、将来的にはシステムの高度化によって商用取引にも応用したいとしている。銀行・電子ウォレットなど、現段階では既存サービスレベルの引き上げに集中しており、市民ユーザーがインターネットバンキングや、モバイルバンク・電子ウォレットといった方法で口座振替を行なうよう販売促進しているが、近い将来に漸進的に商業ユーザーへFPS浸透を図りたい意向。
商業ユーザーの側でも、FPSをどのように利用すればビジネスの収益効率を上げられるかを理解するのに、また売上代金即時回収が可能となるようビジネスのシステム機能を引き上げるのには、時間がかかる。
その他、香港政府はFPSを利用して市民が所得税・差餉(rates, 土地使用税[土地資産全ての所有権が英国王室のものであった殖民地時代から利用権について課される税金の一種で今も続いている] )・水道代などの公共料金の支払いができるよう準備中。運輸署(トンネル使用料など)・イミグレーション(ビザ発行・延長申請などの費用)・レジャー文化事務署(各種チケットの販売代金など)も料金精算カウンターでFPSでの支払いを受けられるよう、現在取り組んでいる。
FPSが今後どのような発展を遂げるか、見通しについて、管理局はさらに幅広いケースへの応用を検討しており、それには海外への支払いも含まれている。市場のニーズを考える他、国際的な決済支払いの場合は、資金移動の関連政策に、またマネーロンダリングの規定に、どのように歩調を合わせるかが、勘案すべきポイントとなるだろう。
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■明報 Ming Pao Daily 電子版から■
【明報 話題のコラム】
〜バーチャルバンク ライセンス認可の後の進展状況〜
『バーチャルバンクは銀行要求により運用開始を繰り延べに 人員配置と関連スキルが未整備のため 金融管理局は固定した期限設定を設けず』
バーチャルバンクのライセンス第一期が認可されて半年に近づいた。認可の時点で金融管理局(以下、管理局)は6か月から9か月の間にライセンス保持者が開業するものと予測していたが、消息筋によるとバーチャルバンクのうち、いくつかが管理局に期限の延長を申し入れていることが判った。主な原因は技術上のマッチングが出来ておらず、人員の配置にもまだ時間が必要だからとのこと。管理局は明報の問い合わせに対して、開業時期を縛る規定はない点を強調している。
今年三月にライセンスが認可されたのは以下の三件:
■中国銀行香港(2388)が率いるLivi,
■スタンダードチャータード銀行(以下、チャータード銀行)が率いるSC
Digital Solutions,
■衆安(6060)。
予測では、早ければ今月9月末までの開業、遅くても今年末までにサービス開始だった。
チャータード銀行は明報の問い合わせに対し、「今年末の運用開始は無理」との回答。他の二行については、衆安はやや楽観的で「来月中のサービス開始が可能」としており、Liviは「今年中を目指しているが、繰り延ばしの可能性もある」としている。