【香港経済を追え vol. 8】
三年半で最大の下げ幅、香港7月期の小売業売上げの落ち込みが11%を上回る!!
2019年も9月に入り、米中貿易交渉が再開されました。アメリカの勝算を疑う声も、中国の強硬な態度が中国国内のビジネスを冷え込ませているという観測の声もあり、両国の衝突が単なる貿易問題に留まらないことから、今後さらに他の産業が影響を受けると思われます。
今の状態を香港のメディアはどのように報道しているかを、9月1日・2日の香港ローカルのニュースサイトからお伝えします。
■on.cc 東方日報(日刊新聞オリエンタル・デイリー)のネット版より
「貿易戦争エスカレート 米中は今日の昼から新たな枠の関税を相互に開始」
予定通り、米中両国が新たな枠の関税の実施を開始した。米中関税合戦のエスカレートにより、両国は香港時間の9月1日(日)昼12:01より、相互に新たな関税枠を課することとなった。米国政府が8月15日に3,000億米ドル(約2.35兆香港ドル)相当の中国産製品に10%の関税を上乗せすることを発表し、9月1日および12月15日の2回に分けての実施となった。
一方、中国政府はその報復措置として750億米ドル(約5,883億香港ドル)相当の米国産製品に5%~10%の関税を上乗せすると発表し、米国政府と同様に9月1日および12月15日付けの2回に分けて実行する予定。米国大統領トランプは更に反撃として、5,500億米ドル相当の中国産製品の関税を5%引き上げるとした。
ビジネス界の予測では、米国に1回目の関税引き上げで影響を受ける中国産製品は総額約1,120億米ドル(約8,785億香港ドル)となり、これにはケチャップ・肉製品・豚ソーセージ・野菜・乳製品・スポーツ用品・楽器・靴・家具などが含まれる。正確な製品総額は政府から公表されていない。
米国の160余りの企業団体はかねてより、ワシントンで関税撤廃を要求している。関税引き上げが消費者意欲を打撃し、経営環境を更に冷え込ませるとの理由からだ。
200社余りの米国ブランドの靴メーカーが先週指摘したところでは、靴などは現在すでに平均で11%の関税が課されており、更に15%の関税が上乗せされると、一部の靴製品によっては関税が65%に達することになると言う。これにより消費者には毎年40億ドル(約314億香港ドル)の関税を余計に支出することになる。しかしトランプ大統領は、先週金曜日(8月30日)に関税引き上げは断固実施を行うとし、むしろ企業マネージメントの不備が経済危機を招くのだと反論した。
(出典元)
■(有線放送局)NOW経済チャンネル 8月30日の報道から
「三年半で最大の下げ幅」
香港7月期の小売業売上げの落ち込みが11%を上回る。
7月期の香港ローカル小売業売上げの落ち込みが11%を上回り、連続六ヶ月での下げ幅がここ三年半来で最大となった。政府の指摘では、暴力事件が今後も続くならば、小売業は更に悪化する恐れがあると言う。
香港社会での力の衝突が更に小売業に打撃を与えた結果、7月期の小売業売上げ344億香港ドル、11%下げ、六ヶ月連続の下げ幅はここ三年で最大。当初の予測より若干高めで、販売数量総数は13%の下げとなった。下げ幅で目立つものは、ジュエリー宝石類、時計、ブランドギフト品などで、24%を超えた。電気製品および耐久消費財に該当しない製品等・薬品・化粧品・服飾などの売上げも大きく落ちて10%余りの下げとなった。
小売業管理協会も、「先日来より衝突事件が続くなら、通年の売上額の落ち込みが1桁台から2桁台になる」と予想していた。人員解雇の波が起こるとも限らないと見ている。
その他、チェーン展開している中華レストランの太興も、「7月・8月に若干の売り上減があり、会社グループが店舗展開のスピードを緩めることはないものの、今年後半の景気動向を楽観視するには難しい」としている。
(出典元)
https://finance.now.com/news/post.php?id=531501
■有線テレビ放送局「NOWニュースチャンネル」より
「『MAX観点』米中貿易交渉と香港問題をリンク付けることは香港にグッドニュースとなるか?」
米中が日曜、相互に関税を引き上げた後、トランプ大統領は「両国の交渉が中止されてはいないが、今日までのところ確実な日程調整には至っていない」と指摘。
ニュース論評番組「時事全方位」のキャスター王慧麟(Max WONG、香港立法議会メンバーの秘書を努めた経験のある情報メディアのコメンテーター。現職議員への辛口な問題提起でも知られる)のコメントによると、「今回の相互関税引上げは米中両国のポーズに過ぎない。貿易戦争がこれで終わるのではなく、むしろ数年越しの交渉になると見て、メーカー各社は交渉の結果を待つことなく、既に手を打っているはずだ」としている。
また同キャスターは、「米中貿易交渉が決裂しても、トランプの大統領続投には影響することはない」と見ている。最新の民間アンケートによると、トランプの全国支持率は41~43パーセントのあたりと出ており、オバマ大統領の時と比べてもほぼ同様の支持率であり、共和党内の支持を見ると9割以上となっているので、トランプ氏は米中貿易交渉が決裂に終わっても心配していないと思われる。
同キャスターは、「トランプは香港問題を貿易交渉とリンクさせて、香港に米国が与えている貿易最恵国扱いを撤廃することを匂わせて、支持者からは賛同の声が上がっている」と述べている。貿易交渉をなごやかに進めるため、トランプが香港にとって良いニュースとなることがあると洩らしていることから、これからの動向には随時注意が必要だ。
(出典元)