【香港経済を追え! vol.46】

2019年の逃亡犯引渡条例改訂に端を発した民主化要求デモと政府の施策抗議活動に、『アップルデイリー』香港は徹底して中央政府への疑念と、香港人の全くの自由を伝えました。同日刊紙を発行する会社は、台湾でも同じ名前の中国語日刊紙の台湾版を発行しています。ひとつ目の記事は、ケーブルテレビ 「now TV」 のニュースチャンネルの報道です。

香港版『アップルデイリー』の発行会社ネクスト・メディア社屋は香港警察によって封鎖され、現在さらに同社の編集者やジャーナリストまでが逮捕の対象になってきたという報道です。ネクスト・メディア社の総裁であるジミー・ライ黎智英は今年逮捕されて既に公判も始まっています。香港版『アップルデイリー』蘋果日報は6月24日をもって営業停止処分になりました。それまではセブンイレブン、サークルKなどコンビニにも日刊紙を売るラックに『アップルデイリー』のラベルを貼った段がありましたが、7月二週目にはどこも全て撤去されています。

現在、コンビニの新聞・雑誌のコーナーで中国資本の入っていない中国語の定期刊行物は、「リーダーズ・ダイジェスト」「ブルームバーグ中国語版」くらいのもので、今後アップルデイリーと同じ立場のメディアは、海外のサーバーにデータを置いているニュースサイトで読むしかないでしょう。ネット上の新聞として台湾版『アップルデイリー』(6月24日までは香港版と台湾版はネット上でリンクしていました)も、中国大陸の共産党との融和路線を進める国民党よりも、蔡英文総統を擁護する立場を続けていくことでしょう。ネット上では英国BBCのサイトが複数の外国語で報道をしていますが、中国語繁体字のニュースはYouTube上にもチャンネルがあり、西側諸国のジャーナリストの立場による中国語ニュースやドキュメンタリーが発信されています。

https://www.youtube.com/results?search_query=bbc%E4%B8%AD%E6%96%87

ちなみに、元警察官のテレビ俳優さんの王喜さんは、2019年からアップルデイリーと同じ路線で政府批判・警察批判をネット上で展開してきた人ですが、最近のFacebook投稿がイギリスでの画像ばかりであるところから既に香港を離れて英国に居を移した、あるいは移すつもりで準備中なのではないかと話題になっています。
https://www.facebook.com/gelekchodhar

【その一】

メディア自由連盟が生命発表:香港の報道の自由が潰されかけている

〜「now TV」2021年7月11日 07:34ネット版から〜

アメリカ国務院は、ウェブサイト上でメディア自由連盟の声明を発表して、香港『アップルデイリー』が強制封鎖され、同新聞社の元社員までが逮捕されていることに対して強い関心を示している。

同声明は、香港特別行政区政府が『香港国家安全維護法』を利用してメディアに圧力を掛けていることは極めてマイナスな行為であり、香港の高度な自治を形骸化し、香港人が「基本法」に保障されている人権と自由を奪うものと非難している。

同声明はまた、香港政府が『アップルデイリー』に対して起こした行動は香港のメディア検閲を強化する背景の下で進められていることであり、公共放送機構の独立性に圧力を掛け、ジャーナリストに対して法的手段を加えるものと批判している。

連盟は、香港政府が今後新たな法令を掲げて、メディアが政府政策へのモニターと批判を行う力を消滅させようとすることも有り得るだろうとし、報道の自由は、香港の繁栄とその存在の国際的な名声の中核部分であることを強調し、香港政府と中国当局が国際法に則して香港人の権利を尊重・保護するようにと呼びかけている。

〜北京の外交部は、新疆ウイグル自治区への国際調査団派遣のことなども含めて、「お前たちに人権を語る資格はない」という談話を発表したと伝えられています。現在新疆ウイグル自治区の『職業訓練所』の労働者を使ったコットン製品があるとユニクロをボイコットする消費者運動があります〜

https://news.now.com/home/local/player?newsId=441775

【その二】

中国国家サイバースペース委員会、海外IPOを狙う中国企業を調査、情報漏洩防止のため。百万を越えるユーザーデータ企業は新株発行目論見書など行政当局へ提出を要求

〜Yahoo!香港電子版に転載された、香港日刊紙「エコノミックジャーナル」 信報財經新聞2021年7月12日(午前3:28)から 〜

中国大陸当局はデータ管理を日増しに厳しくしており、中国国家サイバースペース委員会(中央網絡安全和信息化委員會辦公室Cyberspace Administration of China、以下「網信委」)は、土曜日(7月10日)《網絡安全審查辦法》『インターネットセキュリティー審査方法』改訂草案意見徴収ドラフトを発表した。これは管理範囲を海外上場まで拡大してデータ管理するもので、意見ドラフトは15個の改訂内容を提示しており、中でも100万ユーザーを超える個人情報の運営者が海外で上場しようとする場合、インターネットセキュリティー審査委員会にインターネットセキュリティーについて届出をすることを要求し、キーとなる情報のインフラであるサプライチェーンの安定を確保し、国家の安全を防護するためとなっている。【中国語で行政用語としての「審査」は「検閲」を意味します】

米国市場での株式上場短期的に伸び悩む方向へ

ある分析によると、中国資本企業はこの新規の管理政策により様子見の姿勢に傾き、短期的には海外への進出計画、たとえばアメリカ市場などでの株式上場計画などを思いとどまるだろう。

今回の意見徴収ドラフトの内容によると、百万人を超えるユーザー個人情報を持つ企業が海外上場を目指すには網信委に報告書を提出することになり、市場は管理対象範囲に(該当企業が現時点で主な収益を上げているマーケットの)ほとんどが中国大陸で個人ユーザーとの関わり合いのある大規模IT企業を含むものと見ており、作業には上場審査が含まれているため、元々の「インターネットセキュリティー審査方法」が大陸内地の発展改革委員会、国家安全部、財政部、人民銀行など12機構や委員会による管理運用から、新改訂後はこれに中国証券取引管理局が加わることになる。

さらにキーとなる情報インフラの運営会社は、インターネットセキュリティーの審査=検閲資料を提出し、現状でも要求されている、国家安全に影響するまたは影響する恐れのある分析報告書、調達ファイル、議定書、締結予定の契約書に加えて、今後は「提出予定のIPO(=新規株式発行=上場)資料」が加えられる。つまり、企業の新株発行目論見書など上場する際の提出必要書類を事前に国家審査を受けさせるということだ。

「審査方法」はインターネットセキュリティーの検閲で調達活動、情報処理国外の上場が国家安全にもたらすであろうリスクを重点的にチェックする他、将来的には「国外での上場の後、キーとなる情報インフラ、企業活動中枢の情報、機密情報などや大量の個人情報が、国外の政府に影響されたり、制限されたり、悪意をもって利用されるリスク」といった項目が付け加えられる。

香港ではこれを機に駆け込み的に中国大陸資本の企業が証券取引所入りすることも

『新京報』(The Beijing News www.bjnews.com.cn 文化大革命前から発刊されている中国共産党系全国紙「光明日報」と、広東省一帯で流通していた「南方日報」が共同で設立した株式会社によって発刊される全国向け日刊新聞で、流通量の多くは北京市一帯 )は社説で、「インターネットセキュリティが厳格に管理されるようになれば、上場企業の株価大崩れを引き起こすことになるが、国家の安全と利益と比べるなら、軽重いずれが大事であるかは一目瞭然である」と述べており、「近年来、米国株式の他、香港株式もIPOにますます多くのインターネット業界企業を引き寄せている」ともいっている。

ある市場関連者は、大陸が国外での上場規則を引き締めるなら、香港は逆にメリットが出るため、この機にそうした企業を香港上場に誘導できるかもしれないと観測している。一方、少なからぬ米国に進出して市場開拓をしようとした中国企業は、自身は香港証券取引所入りする条件に合致していない。合致していたとしても、米国、香港の投資者のバックグラウンドは異なっている。今後の伸び代が期待される成長初期段階にある企業は、そこそこ大量の顧客を有し、潜在的対象市場(TAM獲得できる可能性のある最大の市場規模)が膨大なものであっても、大量の現金資産を回している企業や、中国・香港の投資者がこのような企業に示す受け入れ程度はアメリカの投資者ほどに高くない。

アーンスト&ヤング アジアパシフィック上場サービス主管パートナーである蔡偉榮はストレートに、「今回の動きは大陸の管理委員会機構の決定を明らかにしたもので、過去数年来(外為操作や株式市場での売買停止措置など)度々経済活動に政府が干渉する政策の延長上にあり、中国企業は、暫くは様子見に回り、米国上場を先延ばしにするかもしれないと思われるが、数ヶ月で状況回復すると期待される。大陸中央政府の態度は一刀両断に全ての海外上場の会社の動きを封じ込めるようなことはしないはずだ。一部の会社はIPOという手段で資金調達せざるを得ないところもあり、海外で企業吸収合併のオペレーションをする必要がある場合もあるからだ」と述べている。

Refinitiv(金融テクノロジーを駆使した金融サービス会社 https://www.refinitiv.com/ja )のデータによると、目下中国企業およそ21社が米国証券取引委員会(SEC)に上場申請の申込みをしており、合わせると資金調達額は15.6億米ドル(約121.7香港ドル、約1713億円)に達する。一部企業は調達金額の発表または噂がないため、全体の規模は予測額を上回るものと思われる。https://hk.news.yahoo.com/%E7%B6%B2%E4%BF%A1%E8%BE%A6%E5%AF%A9%E4%B8%AD%E4%BC%81%E6%B5%B7%E5%A4%96ipo-%E9%98%B2%E8%A8%8A%E6%81%AF%E5%A4%96%E6%B4%A9-%E6%93%81%E7%99%BE%E8%90%AC%E7%94%A8%E6%88%B6%E6%95%B8%E6%93%9A-%E6%8B%9B%E8%82%A1%E6%9B%B8%E7%AD%89%E9%A0%88%E4%B8%8A%E5%A0%B1-192800461.html