【香港ローカル ニュース Vol. 76】
2019年の理工大学(香港PolyTech)での学生と警官隊の火煙の上がる激突の情景はまだ記憶に新しいですが、累計1,400人あまりが逮捕され、同年9月には28人が起訴され、2021年4月26日あらたに21人が再逮捕されました。
コロナの不安がある中、政治的な機運は明らかな変化を見せています。コロナ関連では依然サイノヴァック(シノバクSinoVac科興)のウイルスを非活性化したワクチンを接種後に死亡する高齢者は毎週のように報道されています。消費が落ち込んだ状況で、香港では 昨年 資格該当者に10,000香港ドルの支給(主に銀行口座への直接振込み)がありましたが、その二回目の給付金5,000香港ドルは電子バウチャーの形で出されることが決まっており、電子マネーのアカウントへの支給となるようです。プリペイドカードで一番初期に確立されたデバイスとしてはオクトパスカードが市民には行き渡っていますが、電子バウチャーの給付金もオクトパスカードで受け取ることが予定されています。電子マネーを持たず、普段外へ出歩かない老人ホーム入居の高齢者にはどうやって給付金を渡すのかといった問題点にも不満の声が上がっています。
■その一■
香港政府の給付金、今度は電子バウチャーにて支給。各種電子マネーへの振込みと並び、オクトパスカードへの自動チャージもあり、二回に分けて2,000香港ドルを4月末、3,000香港ドルを7月に支給の見込み
〜アップルデイリー電子版 2021/04/26 20:00から〜
コロナ禍での市民生活補助の給付金5,000香港ドルはバウチャー支給と発表され、いよいよ給付のタイミングが近づき、給付の受け皿となる運用機関4社は積極的な準備に追われており、なかでもオクトパスカードはチャージの上限を自動的に3,000ドルまで引き上げることになっており、消費バウチャーとしての利用に備える。また、業界筋の情報では、政府でとりあえず二回に分けて消費バウチャーを出すことも考えているとのことで、一回目は2,000香港ドル、そして暫定的に数ヶ月後、残り3,000ドルを出すことになり、現時点では累積して使うことも可能にする見通し。
同消息筋によれば、もし消費バウチャーを累積して使う場合は、選択肢がAlipayHK支付宝、WeChatPayHK微信、Tap&Goだけとなる。オクトパスの場合は、チャージの上限額3,000香港ドルの設定により、二回に分けて受領することになる可能性が高い。「オクトパスカードそのものが250ドルの残高ならば、第一回目に2500ドルの消費件額がチャージでき、ある程度を消費してから残りの500ドル(の消費バウチャー)をもらう」ことになる。
実際に消費バウチャーが支給になる日まで少々の日があるので、政府はどのように補助金を出すのが最大の経済効果を生むことが出来るか検討を続けており、消息筋の指摘では、政府は詳細については朝令改暮の状態で最終案が決まっておらず、業界でもあちこちで不満が出ているため、アップルデイリーは上記の扱いについて直接政府機関に問い合わせをした。
オクトパスカード:異なるチャンネルでチャージする額を引き上げる
従来オクトパスカードはチャージの上限を1,000香港ドルに限っているので、消費バウチャーの支給に制限がかかってしまうことになり、オクトパス運用会社が検討の末、今回は異なるチャンネルでチャージ限度額を引き上げる。今週木曜日(4月29日)から、チャージ額自体は1,000ドルのままのオクトパスカードは異なるチャンネルで段階的に自動的に合計3,000ドルまでチャージできるようになる。ユーザーは随時必要に応じて自分でチャージ額を決められるようになる。
現時点でチャージ限度額が1,000ドルのオクトパスカードは、2019年12月1日以前に発行された商品で、これにはレンタル版オクトパス、買取型オクトパス、銀行提携タイプのオクトパス、モバイル電話タイプのオクトパスなどや、同年10月1日より前に発行されたスマートタイプオクトパス(本人確認の顔写真が入っており銀行口座から自動で残高補充が出来る;学生・高齢者の特別割引もこのタイプ)などがある。
今月4月29日から第一段階の支給が始まり、これに伴いユーザーが異なるチャンネルを通じて、オクトパスカードのアプリを使い最近の入金支出の記録や残高を閲覧したり、払い戻しや賞品の受け取り、チャージ、公共交通料金の政府補填手当ての受け取りなどをする際、チャージの限度額が自動的に1,000香港ドルから3,000香港ドルに引き上げられる。
5月16日から第二段階となり、香港政府の「公共交通料金の補填」手当を需給している人は地下鉄駅などの「公共交通料金補填手当振込端末」で手当てを受けてから、あるいはセブンイレブンやサークルKやウェルカムスーパーマーケットのブランチすべてでチャージをするか「公共交通料金の補填」手当を受けてから、そのオクトパスのチャージ限度額は自動的に3,000ドルまで増額される。
香港政府が先に打ち出した5,000香港ドル相当の電子バウチャー計画で、オクトパスカードはプリペイド式支払デバイスを運営する会社のうちでバウチャーの支給に協力する運用会社のひとつ。この他、その他の運用会社も今回の消費バウチャーという市民生活応援の施策に積極的な動きを見せ、AlipayHK(支付宝)はマカオでの経験を参考にして、香港での消費バウチャーの登録にエクストラの特典をつける可能性もあると見られている。
ニュースソース:
https://hk.appledaily.com/finance/20210426/Q745BNJZRJFKLHMVKP7C7CSWRA/
■その二■
RTHK香港電台ディレクター蔡玉玲「裁判所は報道の自由と一般大衆の知る権利のバランスを取っていない」
〜ケーブルテレビNOWのネット版ニュース 2021年4月22日 17:36から〜
ケーブルテレビ【NOWニュースチャンネル】香港電台『鏗鏘集』Hong Kong Connectionは、この政府所有のテレビ・ラジオ局の長寿ドキュメンタリー番組で、政治・住宅・医療・民主・環境問題など広く香港市民の話題を扱うもの。過去には受賞もしている。この番組で香港民衆のデモや民主化要求を扱ったデリケートな内容の番組の構成に当たった局のディレクターや製作責任者が不正を問われている。蔡玉玲は、2019年の屯門の地下鉄駅外で起きた民主化要求・逃亡犯条例改訂案反対のデモ参加者に白シャツの一群が木刀などで襲い掛かった事件、いわゆる屯門721事件の調査のために、現場に駐車されていた車のナンバーからその持ち主を役所の記録を調べる際に虚偽の申請名を書いたことで起訴されていた。後に2020年から役所の登記内容照会をメディア機関が行うことは禁じられている。
香港電台『鏗鏘集』の製作ディレクター番組記者である蔡玉玲は、2019年に取材の一環として、いわゆる「屯門721白シャツ軍団襲撃事件」を調べる中で事件発生現場に駐車されていた車の持ち主を確認するためナンバーから自動車の登記書類内容を照会した。その申し込み書類に虚偽の記載があったとして、2019年の11月に逮捕され、起訴されていた。
4月22日の裁判判決は、「虚偽陳述」の罪で6,000香港ドル(約773米ドル、約日本円8万3,730円)罰金判決が下った。
蔡玉玲は、「今日の判決は受け入れがたく辛いものでした。裁判所の裁定は一人個人に対してではなく、メディア業界全体、香港の記者全体に対するものです。裁判所の判決は有効なものですが、真相を探る手段を有罪だとするものです。裁判所判決は納得できるものではなく、事の大小を問わずに報道の自由を制限するものです。報道の自由、一般の利益、大衆の知る権利の間でバランスを取った結果ではありません」と述べた。
ニュースソース: NOWニュースチャンネルネット版
https://news.now.com/home/local/player?newsId=432062
■その三■
香港公司註冊處(法人登記処)の前所長ゴードン・ジョーンズ:「会社登記内容閲覧を制限することは商業の有限責任の原則を損なう」
〜【Nowニュースチャンネル】 2021年4月26日 9:14から〜
会社登記処の元所長ゴードン・ジョーンズ氏は「明報」Ming Pao Dailyのコラムの中で、「法人登記簿の閲覧照会を制限することは香港でビジネスを営む際の有限責任の制度の原則を弱めるものだとして、国際金融センターとしてのイメージと名声を損なう」と批判している。
※香港では主権返還以降も、現時点ではまだ裁判官にも公務員にも大勢の外国籍の人がいます。
同氏は、法人登記原簿の閲覧制限に反対声明の声を上げ、「新たな規定が実施されるならば、香港のビジネスライフの中核である、責任制度、全面的な開示、透明性の原則を弱めることになる」としている。(Radio Free Asia陳潤南記者の報道)
香港政府は今年三月に、一般からの会社取締役の身分証や現住所の資料を照会することを制限する提案を出した。香港社会は強烈な反対の声を上げているが、政府が強行するなら直接立法議会に掛けると思われる。現時点の議会は親北京派に牛耳られており、おそらくはそのまま可決されるものと予想される。
ジョーンズ氏いわく、「香港は『有限責任』の原則 principle of limited liabilityを履行しています。会社が倒産したとしても、株主個人が破産することはない。しかし、前提として、会社を経営する役員と関連のあるキーとなる情報、特に、その身分と連絡方法を開示する必要がある。それは債権者・投資家・該当会社と取引をするすべての一般大衆の利益を守るためです。ですから取締役である限り、ある程度の個人プライバシーを放棄することは免れがたいのです」。
ジョーンズ氏の認識では、香港の身分証番号の独自性は他とは代替できないもので、法人登記書類を閲覧するものは、取締役の身分証の番号全体を知ることが出来なければ、身分を確認するのに不確定性をもたらすことになり、政府と業界人が適切に協商するよう提案している。
※現行の香港の身分証番号は、英文字一つと六つの数字と括弧書き英数字となっており、香港出世者・外国人居住者を問わず同じフォーマットで個人を特定できるようになっている。身分証カード上には、臨時居住者なのか、永住者なのか、海外生まれかなのか、香港生まれなのかなどの情報が英文字の略号で示され、ICチップが埋め込まれており、香港のイミグレーション通過手続きはカードをスワイプするだけでよく、また病院での本人確認や公立図書館での図書貸し出しなどでも提示が求められる。香港人の身分証カードは、香港行政特区パスポートの番号と同じであり、パスポートナンバーは更新しても変わらない。また、納税者コードも個人所得税については身分証番号が組み込まれている。
同氏はまた、「個人の任職能力を調べることに制限が掛かるならば、企業の不正行為(賄賂、詐欺、マネーロンダリングなど)の潜在的な可能性が高まることになり、報道業界の少なからざるメンバーは定期的に会社調査を行うべきである」と指摘している。他に同氏は強調する点として「報道業界が報道のための調査で妨害をうけて自由にこのような登記簿閲覧する能力を持つのは、香港のシステムの透明度や公民自由という根本的かつ重要な基礎に他なりません」と述べている。
ニュースソース :Radio Free Asia ネット版ニュース(広東語ページ)
https://www.rfa.org/cantonese/news/htm/hk-gordon-04262021075645.html