【香港ローカル ニュース Vol. 55】

香港ローカルの技術革新は遅れている?財務長官 陳茂波が示唆

香港は仲介貿易から、軽工業製品生産、サービス業・金融業とシフトしながら発展してきました。香港のローカル企業が生産拠点を大陸に移してからは、香港は資材調達や決算、調査開発に重きを置いています。香港島の南の『サイバーポート』數碼港(IBM、マイクロソフト、香港ローカルの大手通信業者CSL[香港移動通訊]などがテナントにいます)と、新界の西貢清水湾の『香港科技大学』サイエンスアンドテクノロジー大学は、そうした取り組みの象徴的存在です。しかし、産業製品や、アカデミックな領域での研究で、香港の技術革新・新しいものを創り出すレベルは、実際のところはどうなのでしょうか。

ニュースソース: 

東方日報 Oriental Daily 2020年10月19日週一 上午5:45 [GMT+8]

https://hk.mobi.yahoo.com/news/%E6%9C%AC%E5%9C%B0%E5%89%B5%E7%A7%91%E7%99%BC%E5%B1%95%E5%B7%AE-%E9%99%B3%E8%8C%82%E6%B3%A2%E8%AA%8D%E8%A1%B0-214500596.html

香港のテクノロジーイノベーション開発は立ち遅れているとの批判がたびたびされている(画像は香港島南にあるサイバーポート)

【東方日報記者】香港の科学技術イノベーション開発は遅れているとたびたび批判を受けているが、財政長官である陳茂波は日曜日の発言で「香港の科学技術革新の発展と応用の両面で好機を逃しているケースが多々ある」と述べたが、「それでも近年政府は大規模なリソース投入を行っており、その結果が目に見えて来ないのは人材トレーニングとインフラ整備は時間が必要であり、思い描いたような技術革新の発展が出来ていない感覚が生じているだけだ」としている。今後香港が世界的な技術革新のレベルに追いつけるのかということに対しては、「キーとなるのがイノベーションを発展させていく決意と責任を維持して行けるかどうかにある」としている。しかし業界内の消息筋では、「政府はリソースの投入をしっぱなしでリソースの配分の不手際から結果が得られていないため、財政長官の発言は責任逃れに過ぎない」という声がある。

かろうじて深圳香港相互補完の関係で優位を保つ

財政長官は更に、「深圳と香港との間にはお互いの優位点を補完する関係があり、競争もあるが互いに相手から学び取る面もあるが、どの都市にもそれぞれに発展を阻害する要因があるので、単にGDPなどの指数で比べるのは単純過ぎる」との見解を示した。また「近年、香港と他の都市を『二都物語』的に評することが多いが、世界中の都市が発展に全力を注いでいる中、香港は相手の多い競争を、自身の特異な優位点を発揮することでのみ、地域内の姉妹都市との共同発展を促すことを通して、これからもなおレジェンドを創り出す都市であり得る」と述べた。

業界人からはリソース配分の不手際に辛辣な批判が

香港資訊科技商會(Hong Kong Information Technology Federation)名誉会長の方保僑Francis FONGの指摘によると、「香港政府は確かに少なからぬリソースを技術イノベーションに投入しているが、やり方がランダムでリソースの投入配分に計画性がなく、ローカルの科学研究が先進的なメリットに繋がっていないために、明らかな業績が出ていない。また、学校以外でも、企業は技術イノベーションの人材育成をすることが出来る」が、同氏の理解するところでは「少なくない海外企業が香港にやって来る目的は利益を上げることであり、香港で研究開発を行うことは珍しく、政府は税務上の優遇を与えるなどの方法で、香港で研究開発するよう海外企業を誘致すべきだ」と見ている。財政長官が人材育成には時間が掛かるので技術イノベーションの開発が思うように進んでいないと発言したことについて、方氏は批判的に捕らえており、「そのような言い方は責任逃れであり、(香港政府は)十年前も前向きなことを言っていたが、今も同じような取り組みをするとは思えません」とコメントしている。

■参考データ■

香港の国際的な競争力を評価するのに、スイス・ローザンヌにある国際経営開発研究所IMD (International Institute of ‎Management Development)が毎年発行するWorld Competitiveness Yearbook(世界競争力年鑑)がメディアでは参照されることが多いが、2020年最新版での多方面の総合的世界ランキングは、シンガポールが第一位で、香港は第五位。かつて香港は2017年第一位、2018年第二位にランキングしており、トップテンには連続して登場している。

ちなみに、このIMD自体は、アジアでランキングトップのシンガポールにブランチを置いている。この事実が、商業都市としての安定度・行政の効率性など複数の要素を考慮して、香港よりもシンガポールのほうが高評価を得ていることの現われとも言えるかもしれない。

World Competitiveness Yearbook

International Institute of Management Development

IMD SWITZERLAND (Lausanne)

https://www.imd.org/wcc/world-competitiveness-center-rankings/world-competitiveness-ranking-2020/

国/地域 2020 2019 2018 2017 2013 2012 2007
シンガポール 1 1 3 3 5 4 2
香港 5 2 2 1 3 1 3
米国 10 3 1 4 1 2 1
スイス 3 4 5 2 4 3 6
UAE 9 5 7 10 8 16
オランダ 4 6 4 5 14 11 8
アイルランド 12 7 12 6 17 20 14
日本 34 30 25 26 24 27 24